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4時半
2011 / 07 / 15 ( Fri )
最初に云っときますが、今回はどうでもいい独り言です。


20代後半はほとんどを長野県で過ごした。

ちょうどいま頃の夏の盛りも長野にいた。

川上村というところ。

八ヶ岳の東、清里や野辺山の北にある、山だらけの長野の、そのまた山に囲まれた村。

でも、山の中なのに…、と驚くぐらい、大きな畑があって、
その中をよそじゃちょっとお目にかかれないくらい大型のトラクターが走り回ってる。

トラクターは皆、エアコン付き。

川上の農家さんはリッチなのだ。

いまもそうかは分からないけど、あの頃は凄かった。

冬は雪と氷に閉ざされるから、夏の高原野菜で一年分、稼ぐんだ。

だから、それはもう、寝る間も惜しんで働く、みんな、おじいもおばあも、子供も、よく働く。

バイトだった僕もよく働いた。

嘘みたいによく働いた。

休みなんかない。

月に1日、休めればいい方。

朝は4時半に起きて朝採り。

いま頃は4時半といえば、もう明るくなり始めてるけど、夏前や秋になると夜明け前で真っ暗だから、
畑に発電機と投光器をセットして採るんだ。

ウチだけじゃなくて、見渡すと、広大な谷のあちこちにライトが灯っていて、スポットライトの下を働き者達が行ったり来たりしてる。

夏の日中は暑すぎるので、早朝の涼しいうちに仕事するのが一番なんだけど、
人手の足りないウチは真夜中の1時2時からもう畑に出てたりする。

だからこんな話をきいたことがある。

川上村の北にあの日航機が墜落した御巣鷹山があるんだけど、
あの事故の時、現場と間違えた自衛隊のヘリコプターが畑に降りてきたそうだ。
どうも、真夜中の畑のあちこちにライトが付いてたから、勘違いしたらしい。

ブヨに悩まされながらトラックの荷台に入るだけ、白菜やレタスを積んだら、農協に出荷する。

一旦帰宅して朝ご飯食べたら、空のトラックに段ボールを積んで、また畑。

男のバイトは主に肉体労働。
レタスや白菜を詰めた段ボールをトラックに積む。

レタスは8キロだっけ? 白菜は12キロかな?
重さにもちゃんと規格があるんだけど、そんな重たいのを、トラックいっぱいだと100箱は確実に積むんだ。

おまけに畑は平じゃないから、歩きづらい。

往復する回数を減らすために、1度に4箱ずつ持って運んでた。

で、出荷して、お昼食べたら、お昼寝。

午後は肥料やったり、雑草採ったり、苗植えたり、種まいたり、明日の出荷分の段ボールを組み立てたり、
結局、日没まで仕事しっぱなしなのだ。

ご飯食べて、お風呂入ったら、9時には就寝。

そんな毎日を過ごしてた。

いま思うと、よく、そんなこと、続いたなぁって思う。

とっても過酷な環境だったので、「○○さんちのバイト様が夜逃げしたらしい」、そんな話をよく聞いた。

朝、バイトを起こしに行ったら、バイト全員消えてた、なんて集団夜逃げもあった。

まぁ、夜逃げしても、川上村はJR小海線しか走ってないし、夜が明けないと列車も来ないから、大抵、川上駅で確保される。

確保はされ、家に連れ戻されはするけど、一度、逃げた人は続かないもんだ。

村の人も辛いのは分かってるから、ホントはずっと手伝って欲しいけど、仕方ない。
それまで働いた分の給料をちゃんと渡して帰ってもらう。

僕も最初の頃はとても辛くて、帰りたくて仕方がなかった。

でも、自分からは言い出せなかったから、
“○○が死んだから帰ってこい”みたいな電話を家からかけてもらおうかと、真剣に考えてた。

それなのに、人間って不思議な生き物で、1ヶ月経った頃、急に慣れてしまった。

突然、頭の中に、♪あ~あ~、あああああ~あ~って、『北の国から』の曲が急に流れ始めて、
あの純と蛍の姿(いや、五郎さんかもしれない)が、毎日、土まみれ、汗まみれで働く自分とダブって、
ホント、突然に田舎暮らしが楽しくなってしまった。

でも、雨が降っても、台風の日も、休みなしに毎日繰り返される肉体労働の辛さは、全然、慣れなかった。

楽しいことなんか、あったっけ?

これが、っていうものは思い出せないけど、畑でよく笑ってたのは覚えてる。

親子ゲンカとか、口論もたまにあったけど、いろんな話して、よく笑ってた。

毎日、大変だったけど、楽しかった。

それは、僕がお世話になってたウチの人がその辺りでも一番いい人だったからだ。

夫婦揃って頭も良かったし、社交的だったし、いろいろ気を使ってくれてたんだと思う。

農協の出荷が休みの時は、みんな総出でキャンプ場へ行ってバーベキューしたなぁ。


畑に霜が降り始めて、早い紅葉が県境の山を下りてきた10月の頭、バイトは終わりを迎える。

その頃には居心地が良くなってしまっていて、帰りたくなくなってしまってた。

やっと、重労働から解放されるって云うのに。

その頃にはもう、近所の売店のおばちゃんまで顔なじみになってるから、
やっと地に足が付いた頃に、その足を引きはがして帰らなきゃならないことがとても苦痛で、寂しくて仕方がなかった。

「田舎に泊まろう」って芸能人が田舎に行って知らないウチに一晩泊めてもらう番組で、
翌朝、一晩泊めてもらっただけなのに、ほとんどの芸能人が泣きながら帰るんだけど、
僕にはあの感覚が痛いほど分かる。

川上を出る時、駅まで旦那さんが軽トラで送ってくれた。

「お世話になりました」と頭を下げ、改札を出ようとした僕の背中をそっと押してくれた、あの手の感触がいまでも忘れられない。

行って来い。

そんな感じで送り出してくれた。

小淵沢へ向かう列車が動き始めたと同時に自然に涙があふれてしまった。

言葉にできない、いろんな思いがあふれて止まらなくなってしまった。

あの頃の小海線の車両はボックスタイプの座席だったから、イスの影に隠れて存分に泣けた。

僕は川上でもスキー場でも最後まで働いて、たくさんのバイト仲間を見送ってきて、
僕自身は誰にも見送られず、そっと帰るパターンだったから、見送るのは得意だけど、見送られるのは苦手。

だから余計にたまらなかった。


人間の脳はイヤな思い出は忘れたり、いい思い出に中身をすり替えてしまう、って話を聞いたことがあるけど、
あの逃げ出したいほどの過酷な肉体労働もいつしかいい思い出になってて、
結局、次の年も、また次の年も僕は川上に舞い戻ってしまい、通算で5年も通い続けてしまった。

あの頃、僕は嘘みたいにがんばってた。

ちょうど、夏の盛りのいま頃、僕はがんばってた。

でも、僕ががんばったなんて云うのは、結局の所、ただのセンチメンタルだ。

川上の人たちはあの大変な夏を毎年繰り返してるんだから。

凄いと思う。



他人にはどうでもいいことをいっぱい書いてしまいました。

夏の明けかけた朝は、思い出すことがたくさんあって、時々、心が重くなってしまうから、
ちょっと、ため息、させてもらいました。
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06:44:51 | コメント(回答)(1) | page top↑
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コメント
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自分も川上村でバイトしてました。
ブログ拝見して、あの過酷な日々を思い出し、懐かしい気持ちになりコメントさせてもらいました。最初はただトラックに採れたレタスを運ぶだけだったのが、日数を重ねていくうちに収穫を任せてもらえたり、苗植えなんかも任せてもらえたりして、遂には2つの畑を任せてもらえて…嬉しかったなぁ。帰る時のあの切ない感じ…よく憶えてます。「またな」って握手した時のおじさんの手の温かさ、涙ぐみながら手を振ってくれたおばさん…忘れないですね。
何年か経って、お土産を持って再訪した時にも温かく迎えてくれて、レタスも売るほど持たせてくれて…短い間でしたが、本当に良い体験が出来ました。
by: B.B * 2023/05/07 21:11 * URL [ 編集] | page top↑
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