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今日もトムラウシを取り上げます
2009 / 12 / 09 ( Wed )
昨日はトムラウシ大量遭難事故の中間報告の要旨を掲載ましたが、
今日は数々の問題点を指摘している記事をアップします。

現場でいつ、どんなことが起きていたのかの行動概要も載っています。

 奇声を発する女性客…。

生死の境の生々しいやりとりの一部を垣間見た思いがしました。

山岳遭難事故は他人事ではありません。

ツアー登山に良く参加されてるみなさんも、
ガイドやリーダーの技量をいかに問うか、
参考になるかと思います。

毎日新聞・北海道版から、

大雪山系遭難:中間報告 パーティー行動概要/要因と考察(要旨)

 ◆パーティー行動概要

 【7月15日15時】

 ヒサゴ沼避難小屋に到着。
女性客G「この日は泥んこ道を長時間歩いたため、皆さんへろへろだったようだ」


 【7月16日5時】

 リーダーAが出発を30分遅らせることを伝える。
女性客A「夜2時ごろ、風雨が強かった。私個人としては1日停滞しても、キャンセル費用は掛かるが、命には代えられないと思った」
女性客G「こんな天候の日に行くんか、と思ったが、ツアー登山ではわがまま言ったらきりがない」


 【5時半】

 リーダーAがトムラウシ山の迂回(うかい)コースをとることを伝えたが、今後の天候判断による対応などについては語らず。
女性客B「リーダーAさんが、『僕たちの今日の仕事は山に登ることじゃなくて、皆さんを無事山から下ろすことです』と言ってくれたので安心した」
 すぐにアイゼンを付けて出発。


 【6時10分】

 (主稜線=りょうせん=のヒサゴ沼分岐)

 雪渓を通過後、シェルパDが別れヒサゴ沼に戻った。
ガイドB「前日に低気圧が通過して、この日は離れていくだろうという予報だった。それが、逆にあそこまで風が強くなってしまうというのは、全く予想外、想定外だった」

 (日本庭園)

 西風が強さを増し、少しずつパーティーの足並みにばらつきが出てきた。
女性客G「木道の端を持って、強風に耐えながら必死に歩いた。怖いと思ったが、あの避難小屋には引き返したくなかった」


 【8時半ごろ】

 (ロックガーデン)

 ここまで通常コースタイムの2倍の時間がかかっていたものと思われる。
ガイドC「ものすごい風になった。とてもではないが、真っすぐに立って歩けない風だ」


 【10時ごろ】

 (北沼渡渉点)

 北沼の水がはんらんして、川幅2メートルほどの流れに。
ガイドBが流れの中に立って(水深はひざ下くらい)手渡しでメンバーを渡す。
女性客G「北沼は白く大きく波打っていた。女性客Kさんが嘔吐(おうと)し、奇声を発していた」
 全員、渡渉を終える。
ガイドCから「肩を貸してずっと歩いてきた女性客Jの様子がおかしい」との指摘があり、次第に意識が薄れていった。
男性客Cが誰言うともなく叫んだ。
男性客C「全然動きがないので、『どうするんですか?』とリーダーAさんの所へ自分で行った。そうしたら『様子を見る』ということで、それでも待っていたけど何も指示がないものだから、『これは遭難だから、早く救助要請すべきだ!』と大声で叫んだんだ」


 【10時半ごろ】

 (北沼分岐)

 女性客Jの付き添いにリーダーAとガイドCを残して、本隊は風を避けられる地点に移動を開始。
ところが、人数を確認すると2人足りない。
ガイドCに先導を頼み、ガイドBが北沼分岐に戻ってみると、女性客Nと女性客Hがまだ残っていた。
女性客H「北沼渡渉点を過ぎて立ち止まった所で、体が一気に冷え込んできた。腕で抑えても止められないほど全身が震え、歯ががちがち鳴った。その時一瞬、『あぁ、これで私は死ぬんだろうか』と思った」

 (第2ビバーク地点)

 ガイドBは女性客NとHの体やザックを背負い前進する。
雪渓を登り切った所に歩行不能な女性客Iに付き添って、元気な男性客Dが休んでいた。
本隊(ガイドC+10人)は女性客3人が歩けない状態なので、ガイド2人で協議する。
女性客H「北沼分岐付近では、女性客Nさんの後ろを歩いていたが、彼女は何ごとか叫びながら、四つんばいで歩いていた。私も同じような状態で、やがて記憶をなくした」


 【11時半~正午ごろ】

 協議の結果、ガイドBとともに歩行不能な女性客3人と付き添いで男性客Dがここに残ってビバーク、ガイドCが引率して歩行可能と思われる10人を下山させることに。


 <以下は本隊の行動概要>

 本隊が下山開始。
昼食後に歩き出して間もなく、男性客Mが遅れ出す。
男性客F「引き返してみると、Mさんが直立不動で立ち止まっているのが見えた。足を出せと言っても、左右の区別ができない」
 衰弱していた女性客Kと女性客Lも歩行がおぼつかなくなる。
後方にいた男性客Cが追い越していく。


 【13時30~50分】

 (南沼キャンプ場)

 男性客Fは男性客Mを歩かせようとするが動かせずあきらめる。
男性客F「女性客3人に追いついた。女性客Kさんはぐったりしていたし、女性客Lさんは奇声を発していた」

 (トムラウシ分岐)

 ガイドCはトムラウシ山の南側に回り込めば携帯の電波が通じるだろう、と再び歩き始める。
付いて行けたのは男性客Eと女性客Gだけ。


 (トムラウシ公園)

 公園の上部で、男性客Fに見守られながら、女性客Kの意識が次第になくなり、続いて女性客Lも静かになった。


 【16時28分】

 女性客Bが警察に電話をしたが不通。
女性客Bはここでの初めてのビバークを決意する。
(第3ビバーク地点)


 【15時ごろ】

 (前トム平)

 ガイドCと女性客Gが前トム平に到着。


 【15時54分】

 女性客Gの携帯に、ご主人から電話が入る。
女性客G「電話は度々通じては切れた。ガイドCさんにかわり、彼がなんとか答えたが、ほとんどろれつが回らない状態で、盛んに『ポーター、ポーター』と叫んでいた」 ガイドCが「自分はもう動けないので、2人で下りてくれ」と言うので、女性客Gは「男性客Eさんと一緒に下りますよ」と声を掛けて出発する。


 【17時21分】

 (前トム平下部)

 前トム平で2人を見送ったのち、ガイドCは意識のはっきりしないまま下降、ハイマツの中に倒れた。
ガイドC「110番通報が通じて、自分の中で緊張の糸が切れた。最後にたばこを1本吸って死のうと考えたが、ライターが何べんやっても火がつかない。『あぁ、たばこも吸えんうちに死んじゃうんだ』と思いながら、そこから先はもう記憶がない」
 トムラウシ分岐で男性客Cに追いついた女性客Aが、2人で下りてくる。


 (コマドリ沢下降点)

 女性客Aと男性客Fが2人で下山を決意する。


 【23時55分】

 (トムラウシ温泉)

 女性客Gと男性客Eがトムラウシ温泉コースを下山、温泉手前の林道で報道の車に拾われ、短縮コース登山口へ。
女性客G「直接死亡シーンを見ていないので、最後まで遭難の実感がわかなかった」

 <ビバーク・パーティの行動概要>

 【11時30分~正午ごろ】

 (第2ビバーク地点)

 北沼分岐の先で、ガイドBはビバークを決意。
男性客Dに女性客の付き添いを頼んで、ガイドBは南沼キャンプ地に向かう。


 【16時38分】

 ガイドBは携帯でアミューズトラベル社の札幌所長にメール。
「すみません。7人下山できません。救助要請お願いします。トムラの北沼と南沼の間と、北沼の2カ所です」

 【17時04分】

 「すみません。8人です。4人くらい駄目かもしれないです」とメール。
南沼キャンプ場の手前で男性客Mがうずくまっていた。
首筋に触れても脈はなかった。
南沼のキャンプサイトでテントや毛布、ガスコンロなどを発見し、ビバークサイトに持ち帰る。


 【18時ごろ】

 (第2ビバーク地点)

 ガイドBは、男性客Dに手伝ってもらってテントを建てる。
女性客H「とにかく寒くて気がついたら、テントの中で女性2人と並んで寝かされていた」


 【19時10分】

 次いで本社社長と話す。
直接、新得署と話をしてくれ、とのことで、警察と何回かやり取りする。


 【20時半】

 ガイドBがテントに戻ると、女性客Iが意識不明に。


 【7月17日4時45分】

 トムラウシ温泉コースで下山中、1時半から2時間ほどビバークしていた男性客Cが、トムラウシ温泉に自力下山。


 ◆要因と考察(要旨)

 ■現場の判断や対応にミスはなかったか

 【第1のポイント】

 *ガイド・スタッフ(スタッフ)はどういう天候判断でヒサゴ沼避難小屋を出発したのか。

 *参加者の体調や体力、精神状態を斟酌(しんしゃく)したか。
ツアー登山では、参加者個人の意見は言わないのが暗黙のルールというが、悪条件下ならばこそ、気配りがあっても良かったのではないか。

 *稜線(りょうせん)のヒサゴ沼分岐に出てみてどう感じたのか。
ガイドB(32)は、天人峡へエスケープする心積もりもあったというが、なんの判断も下していない。
ヒサゴ沼と稜線では、風雨の厳しさが大分違ったはずである。
まずはここで最初に、危険を予知すべきではなかったか。


 【第2のポイント】

 *ロックガーデンを登り始める前に、強風雨が収まるのを待つという判断はできなかったのか。
大岩の陰やハイマツの中で仮ビバークするという方法もあったのではないか。

 *この辺りまで進むのに、標準のコースタイムの2倍近い時間がかかっている。
パーティーは、とてもまともに進んでいるとは言えないような状況だったと思うが、この日は長丁場だけに、どういう時間の見込みで歩いていたのか。

 *ロックガーデンの登りで、低体温症の前兆がすでに表れている参加者がいたと推定し得るが、なんの対応もとられていない。
参加者のコンディションをチェックし、防寒対策やエネルギー(行動食など)と水分補給をこまめにアドバイスした形跡がない。

 *北沼渡渉点でなぜあれだけ長時間、パーティーを停滞させたのか。
特に渡り終えた先行者を、吹きさらしの中でなんの指示もなく待たせている。
この停滞時間が、パーティーの運命を決定付けたといっても過言ではなかろう。

 *渡渉終了後、1人の行動不能者のためにスタッフ3人が集まって世話をしている。
その間、次の行動の指示はなく寒さと不安感が募って一部参加者の不満が高じている。


 【第3のポイント】

 *渡渉終了点で女性客J(68)が行動不能に陥り、リーダーA(61)が付き添ってビバーク(第1ビバーク地点)するが、その判断と環境は適切だったのか。
パーティーの責任者であるリーダーが後方に残るということは、登山の常識では考えられないことである。

 *その後、本隊も二つに分かれるが、その判断は妥当なものだったか。
パーティーをできるだけ分散させないのも、山登りのセオリーの一つである。
スタッフは分散させることの危険性を、事前に認識していたかどうか、疑問が残る。

 *北沼分岐の先(第2ビバーク地点)でビバーク組と本隊とに分かれるが、トムラウシ山に詳しく、まだ元気なガイドBが残り、その先の道は未経験で、しかも低体温症の症状が出ているガイドC(39)が本隊を率いて下山したのは、果たして適切な判断だったのだろうか。

 *本隊としてガイドCと参加者10人が下山を始めるが、この10人がとても無事に下山できるようなコンディションではなかったのではないか。
歩き出して間もなく次々と落伍(らくご)者が出ていることは、それを物語っている。
これに関しても、参加者の体調や精神状態に対する確認がなく、甘い判断のまま行動に移っている。


 ■ガイドの力量に問題はなかったか

 *危険予知能力をどれほど持ち合わせていたか、疑問が残る。
特にスタッフの判断の迷いや遅れによって対応が後手後手に回り、パーティー全体をどんどんピンチに追い込んでいったと思われるふしがある。

 *低体温症に関する知識は、書物で読んだことがある、といったレベルであったと思うが、特に夏山でも低体温症が起こり得る可能性については、深刻には認識していなかったのではないか。

 *悪天候下で、ガイドが自分自身の体力をどれほどと認識していたか。
また、スタッフと参加者の経験差、体力差をどれだけ認識していたかが、一つのポイントであろう。
今回の参加者は50代の2人を除き、残り13人がすべて60代である。
特に30代のガイド2人と参加者の差は大きく、参加者の疲労度を若い2人がどこまでシビアに認識していたか、疑問が残る。


 ■ツアー会社に問題はなかったか

 *アミューズ社は現場でのあらゆる判断、対応はすべてガイドに任せており、何かあれば会社が全面的に責任を負う考えという。
今回のようなツアーは、旅行業務の一環とはいえ登山活動であり、登山としての安全性を重視した判断をガイド側から主張できるような体制にあっただろうか。

 *今回のツアー企画そのものの脆弱(ぜいじゃく)性(参加者のレベル把握不十分、エスケープルートなし、予備日なし、避難小屋で幕営の場合のリスク、ガイドの土地勘なし)などに対して会社は認識し、それを担当ガイドに伝えてなかったのではないか。

 *危急時の対応について、アミューズ社としては、とにかく「無理して突っ込むな」「そのパーティーで一番弱い人を基準に行動しろ」と指導しているというが、ガイドに徹底されているとは言えない。

 *ツアー登山に予備日はない、というのが業界の常識というが、そうはいっても、万が一の場合は停滞を余儀なくされ、当然ツアーを延長せざるを得ないケースがあるだろう。
その場合、100%ガイド判断に任されているのかどうか。

 *避難小屋泊まりを前提としたようなツアー募集は、避難小屋の本来の使用目的から逸脱している。
慣れていない人、あるいは高齢者にとって、悪天候下での幕営は大きな負担となり、翌日の行動に支障が出ることもあるだろう。

 *ツアー登山の定着とともに、「ツアー登山客」という層が生まれ、「ツアー登山ガイド」というカテゴリーができ上がりつつある。
多くの人々が気軽に山を楽しめることは素晴らしいことではあるが、そこに潜むリスクに対して敏感でなければならない。


 ■参加者の力量と認識に問題はなかったか

 *参加者は、自分の体力レベルについてどの程度客観的に認識していたのか。
一般の登山者、特にある程度組織的に訓練された登山者と比べて、自分はどの程度と分析していただろうか。

 *ツアー登山というシステム(会社やガイド)に対する依存度が高過ぎて、自立できていないのではないか。
ツアー登山といえども、フィールドは一般の登山と同じである。
登山とは、最終的に自己責任が基本となる、という認識を持っていたかどうか。

 *ガイドを信頼し、その指示に従って行動するのが基本のツアー登山といえども、参加者自身でも現在地の確認や時間管理、自身の体調把握など、登山パーティーの一員として、認識していることが求められるはずである。

 *一般にツアーの参加者は、単独では山に行けないのでツアーに参加する、という人が多く、パーティーとしての参加意識が薄く、時には参加者同士のつながりも避けたりする傾向があるようだ。
今回、お互いに助け合う姿が一部に見られたが、寄せ集め集団といえども、一つのパーティーであるという強い認識を持ちたいものである。

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